【3/3】『ニューカルマ』新庄耕さん、作家よりマルチの方が稼げる?

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ベストセラー『狭小邸宅』誕生秘話

 

―『狭小~』はどういう風に題材を決められたんですか?

 

友達が不動産やってて。その友達が不動産業界にいたの。その様子を振り返る話をしてくれてたときに、凄い話してるなって思ったんです。

 

当時、彼が担当していた城南エリアといったら日本一の市場。日本一の店舗のナンバー2なんだ、と。一流企業に入って、出世頭、日本を代表するエリート。サラリーマン、政治家、芸能人、学者とかね。高卒だったり自衛隊上がりだったりする営業マンが、そいつら手球にとっていく。それで買っていく家があの形(※狭小邸宅、ペンシルハウス)。

 

そんな話しを聞いた時に「すごい皮肉が隠されているな、ここに」と思って。で、小説にしよう、って思いました。

 

 

―結果的に、『狭小~』はベストセラーになりましたよね。

 

『狭小~』がウケて、色んな人に、「次も不動産関係書けよ」と言われたんです。でもそうすると『不動産小説家』みたいになりそうで。結構ひねくれてるから(笑)、求められるものを素直に書きたくない。キャッチーなのがいいかなと思って、I大編集者(※新庄さんの担当編集・Iさん)と相談した結果、「マルチでいこう」と。

 

 

―相談されて決めていくんですね。

 

もちろんもちろん。相談して決めます。こっちが書きたい企画が通るなんてまずありえない。いまは(担当と作家の)共同作業ですね。小説の題材って難しくて、筆力が無いものだから。「題材の強さを」「なるべく過激でなるべく面白いものを」と追求していくと、「端」のほうにいっちゃうんですよね。

 

 

―「端」というのは?

 

「あまり共感を得られないけど、変わっているもの」のこと、ですね。例えば刑務所とかヤクザとか。実態を知っている人は限られているんだけど、その事実があるだけでひとつのフックになるものですね。そういう(変わっている)ものに依存しがち。でも、それと読者がいるということは違いますからね。ただマルチの場合、面白いのは、意外と誰でも知ってるということですね。

 

 

沢木耕太郎に憧れて作家を目指した

 

―もともと小説を書こう、という思いがあったのですか?

 

物書き(になりたい)っていう思いは大学生のときからずっとありました。きっかけは、沢木耕太郎。沢木になりたいけどなれないんですよ、皆。デビューの仕方も含めてね。自分の能力とかポジショニングも踏まえて、なんとなく直感で分かってたんでしょうね。「手を出してはいけない」と。ぶさいくな男がジャニーズ事務所に入ろうとする、みたいな。

 

でも友人からその(不動産業界の)話を聞いたときに、「その素材の料理の仕方次第では、小説でひとつ突破できるかも」って思いましたね。

 

 

―ということは、処女作がデビュー作ということですね。

 

まあ、そのあと投稿生活してましたけど、それが最初ではありますね。完成までに1年くらいかかりました。描き方が分からない。けど書くしかない。

 

最初は中短編で応募できる文学賞に応募して、1回、2回と名前が掲載されていたんですが、3回目から名前載ってなくて。「○○(注:放送禁止用語につき伏字処理しています)」って思ったね(笑)。

 

そこでまた気を取り直して書かなきゃ、って思ってたところに『狭小~』が部屋の隅にあった。「これ出してみっか」、と手直ししてすばる文学賞に投稿したのが彼(Iさん)の目にとまった。純文っぽくなくて社内ではこれは残せないね、ってなってたところを彼が残してくれたんですよ。

 

 

―(Iさんへ)なぜ残したんですか?

 

「(Iさん)面白かったんです、とにかく。カテゴリーエラーというか、純文じゃないんじゃって意見もあったのですが、とりあえず最終には残そうってことになりました」

 

すばるは優しいんです。応募者の原稿をゲラにしてくれて、担当がついて、直しができるんです。プライベートな時間を使い、神保町の喫茶店で土日に打ち合わせして。俺もホテルに缶詰になって必死で直して。必死だからさ、こっちも。「これが最後だ」と思って。

 


 

―新庄流・作家志望者へのエール

 

―受賞された時はどんな気持ちでしたか?

 

もう「無敵だ」と思った。万能感。スーパーマリオがスター取るとキラキラってなるでしょ。あんな感じ。

 

 

―それは気持ち良いでしょうね、どのように受賞の連絡は来るのですか?

 

担当から電話が来ます。電話の仕方もイヤラシイんですよー。「……いまお電話よろしいでしょうか、、、」(よそよそしい感じ)って。「あ、落ちたな」って思ったら「受賞決まりました。」って。「うぇえっ?」って(笑)。二人でお祝いもしました。

 

 

―笑。受賞後は、すぐに次作を書くぞ。という気持ちになりましたか?

 

「やってやろう」とは思いました。けど描けなかった。気持ちはあるのに描けない。皆そうですよ。1作だけで終わっちゃうってそういうことなんでしょうね。2作目というのは、ハードルが高い。3作目も。ずっと高い。小説家を目指す皆さんは覚悟するように(笑)。

 

 

―それでも専業作家であり続けようと思ったのですね。

 

今この瞬間ひとつのことを死ぬ思いでやりたいからですね。なんとかして半端に生きよう、とは考えない。リスクを負って、とことんやって、死にたい。そういうやつって死に様はだいたいエグイんですよね。でも、長生きする感じもしないし、散々やらかしてきたし……いま生かされてるだけで感謝ですよ。

 

 

 ―では、最後に小説家志望の人へのメッセージをお願いします。

 

やめたほうがいいんじゃないですか? 想像の100倍茨ですよ。マルチの方が、稼げます。(笑)

 

 

ーありがとうございました!

 

(取材・文 ささ山もも子)