【2/3】『ニューカルマ』新庄耕さん 僕もマルチをやっていました、すぐ辞めたけど

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※前回の記事はこちら

 

目次

鬼にならないとお金は稼げない

 

―新庄さんの考える「マルチのメリット・デメリット」ってどんな部分だと思いますか?

 

メリットは稼ごうと思えば10億でも稼げる「可能性」。承認欲求が満たされればそれもメリットだし。デメリットは社会的評価かな。でも、うまくやれば関係を壊さなくてすむかもしれないから、デメリットと一概に言えない。僕からの答えはメリットもデメリットもない、ですね。

 

お金を稼ぐときは何らかの「うしろめたさ」がつきまとって、その濃淡がそれぞれ違ってくる。何が良くて何が悪いか、どこまで信じるかはその人個人の問題だから、そこからのスタートですね。悪いって分かってたら、その時点で「悪い」って言ってオワリですからね。

 

 

―ちなみにマルチを実際にやってはいなかったんですか?

 

あ、やってましたよ。

 

 

―えーー。やっていたんですね。。

 

あるマルチビジネスの会社に僕の知り合いがいて。「第二事業でいっしょにやろう」って。会員にはなりました。でも子供(※子会員のこと)を作っていくのが難しいんですよ。で、「ちょっとだめだな」ってて思って、それで辞めちゃった。

 

 

―すぐに辞められるものなのですか?

 

お金払わなければ抜けられますからね。知り合いからは引き止められましたけど。「新庄さんだったらぜってーフェラーリ乗れるのになあ」とか、「少なくとも100(万)はいけそう」とか言われたら(揺らぎます)ね(笑)。でも、ビジネスライクにいかないとだめなんですよね。俺は、そういうのができなかった。

 

 

―過剰に親しくするとダメ、ということですか?

 

お金をそういうふうに稼ごうと思うと、ある瞬間で、「鬼」っていうか「人を人と思わないように」ならないとできないということです。俺が見てきたのは、週刊誌が喜びそうな世界の縮図でしたね。

 

でも、それが我々がいま生きている社会なんです。だから、何が正しいかっていうのを常に考えながら、検証しながら、疑いながら生きて行くしかないんですよね。面白そうでしょ。こういう素材があると書きたくなるんですよ、小説を。

 

 原稿を書いては消し、書いては消していた3年間

 

―作品発表後、マルチ関係者の反応はいかがですか?

 

反応、ないんですよ。

 

 

――えーー。

 

沈黙。『狭小~』は意外と不動産業界の人が喜んでくれたんですけどね笑。あるあるって。「おれスタンガン(※)だったよ」って話をしてくれたり、半分自虐的に楽しんでくれてます。『ニューカルマ』も、じわじわとでも、広まってほしいです。

※遅刻した部下にスタンガンを押し付けるなどした、ブラックな不動産会社

 

 

―『狭小~』発表から『ニューカルマ』発表までの3年間についてお聞かせください。

 

ずっと小説を書いていました。その3年は書いては消して、「あ、だめだ」って思っては全部捨てる。1円にもならない原稿を。

 

 

―かなり精神的に負荷がかかったんですね。

 

自分が小説でやっていくのかという、覚悟が問われました。嫌だったら辞めればばいいんだもん。誰もやれって云わないんだし。人称は三人称か一人称かとか、文体とかもわけわかんなくなっちゃって。書きたいことを書くための叙述の技術とか、物語の構成の仕方や展開の仕方も勉強して。

 

 

―根本的に作品の書き方を見直していたのですね。

 

そうですね。(担当編集の)Iさんも純文系の『すばる』からエンタメ系の『小説すばる』にうつって、視点もよりエンタメ重視になりました。『ニューカルマ』も面白仕立てです。

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