【1/3】『メンヘラ刑事』本田晴巳さん 「もう生きてる価値ねーわ」と思った過去

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『メンヘラ刑事』生みの親の本田晴巳さん

 

「メンヘラ」という言葉をご存じだろうか? 「メンタルヘルス」、つまり心の病気を持つ人のことを指すネットスラングだ。タイトルにその言葉を冠し、主人公も「メンヘラ」という設定の小説が今、話題になっている。発売後、瞬く間に5万部を超えたベストセラーで、コミカライズもされた『メンヘラ刑事』である。

 

作者の本田晴巳さんは、明るくて笑い上戸、メンヘラとは無縁に見える。しかし、作品やキャラクターが誕生した経緯についてインタビューをするうちに、意外な過去が明らかになった……。

 

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キャラクター作りは餃子作りと似ている

 

―メンヘラ刑事とはまた、ものすごいタイトルですね……そもそも、どんな着想から生まれたのですか?

 

刑事ものを書こうと思っていたんです。それで、今キャラクター小説が流行ってるじゃないですか? 友達に「腐女子刑事」「サブカル刑事」「メンヘラ刑事」って候補を出していって、どれが読みたいか聞いたら、「メンヘラがいい」って言われたんです。それで、『メンヘラ刑事』にしました。

 

―メンヘラという設定の主人公・梅林寺凜々子や、暑苦しいほど熱血漢の竹山弥生など、キャラクターが非常に個性的ですが、どうやって作られたのですか?

 

私はいつも後出しで、最初に作らないんですよ。『メンヘラ刑事』の場合だったら、名前と年齢と所属部署をとりあえず決めて、書いて、その後に詳しい設定を作るんです。最初に作っちゃうと縛られちゃうので、書くのがしんどくなってくるんですよね。

 

書いているうちにキャラクターが勝手に動いていって、凜々子や竹山が「私はこんな子ですけど」「オレこんなんですよ」って(言ってくる)。「おぉ、分かった! うるせー、黙れ、思い通り動けよ!」って思いながら書いています(笑)。

 

 

―物語が進むにつれて、自然とキャラクターに魂が宿っていくのですね

 

そうですね。でも、前半はなかなか動いてくれなくて。半分くらい書かないと、そこ(魂が宿る)まではならないんですよね。

 

餃子作ったことあります? 最初に作るときって、不恰好で(包むスピードも)遅いじゃないですか。でも慣れていくと、どんどん早くなっていきません? あれと一緒ですよ。どれだけ餡を入れればいいとか分かってくる、あれの感覚に近いですね。

 

 

―とてもよく理解できました(笑)。『メンヘラ刑事』は、脇役も非常に魅力的なキャラクターばかりですよね

 

クドカン(宮藤官九郎)が好きなんですよ。クドカンの作品は、もちろん主人公も魅力的なんですけど、脇役もめっちゃ魅力的じゃないですか。三谷幸喜さんもそう。メインのキャラは話を背負っていくから、ちゃんと歩く道筋が決まっているんですけど、脇役ってどこに行ってもいいから、動かしやすいんですよね。

 

 

―プロット(筋立て)はどこまで決めてから書き始めるのですか?

 

物語の起承転結とか、「これを絶対にしないとだめ」という分岐点だけ決めて書き始めますね。『メンヘラ刑事』も、三分の一はノンプロットなんです。自分でもどうなるか分からないから、本当にきつい。一日1万5000文字や2万文字くらい、体力が持つ限り書いてて、やばかったですね。

 

本当はプロットをきっちり作りたいんですけど、残念ながらそれだと面白いって言ってもらえなくて。ノンプロットで書いたところが面白いって言われるんですよ(笑)。

 

 

衝撃告白! 私、二回くらい●●をしてるんです

 

―ところで『メンヘラ刑事』を題材にしたということは、メンヘラに関心があったり、少なからずそういう時期があったりしたからなのでしょうか?

 

私、二回くらい自殺未遂を起こしてるんです……あ、今は元気ですよ(笑)!

 

 

―ほ、本当ですか!? 差支えなければ、一体どんな方法で?

 

首つりを(笑)。世間のイメージって、荒縄をカーテンレールに引っ掛けて首をつるじゃないですか? でもカーテンレールって消防法で、すぐに外れるようになってるんですよ。紐もビニール紐で、10センチの高さがあればできるから、ベッドに括り付けて角度をつければ逝けますよ。最も安くて簡単で、確実なのが首つりなんです。

 

ある政治家の秘書が汚職で捕まりそうになって、日本刀で腹を切ったんですね。それでも死ねなくて、5階から飛び降りてもまだ死ねなくて、結局首つって死んだっていうね……(ここから延々と首つりについての講釈がはじまる)

 

―15分後―

 

 

―ものすごい知識ですね……全部ご自身で調べたのですか?

 

そうですね。本当に病んでいるときに、海外のライブカメラで、自殺スポットの山の中はどうなっているのか検証するサイトがあって。それをずっと見てたりとか、ははは。

 

 

―『メンヘラ刑事』の凜々子と同じ時期があったのですね……

 

製菓師を4~5年していたんです。テレビ番組『料理の鉄人』を見て、小林カツ代さんがすごい格好良く見えたんですね。それで製菓の専門学校に通って、個人店のお菓子屋さんで働いていたんですけど、ぎっくり腰になっちゃったんです。華やかに見える仕事ですが、10キロの小麦袋を担いだり、重労働なんですよね。それで仕事を辞めるしかなくて。

 

そのときに恋愛トラブルもあって、精神状態がわーってなって、「もう生きてる価値ねーわ」と思っちゃって。精神科も二回くらい行きました。

 

 

―そこからどうやって立ち直ったのでしょうか?

 

違う県に引っ越しして、環境を変えたら元気になったんですよ。あと、小説もその頃から書き始めました。当時は2006年か2007年で、インターネットの掲示板に小説を投稿してたんですよ。パソコンもなかったから、ケータイでポチポチ打って。

 

内容は、えーと、どやったかな……救いようのない暗い話を書いていたと思います。男子高生が主人公で、最後にひどい死に方をする話やった気がする、ははは。

 

 

―読者からはどのような反応がありましたか?

 

暗い話なんですけど、読んでくれる人が結構現れて、「泣きました」って言われたりしました。それで「いけるんじゃないかな」と思って、スターツ出版が運営する「野イチゴ」っていうケータイ小説投稿サイトに登録して、「ソース」っていう作品を書いたんです。

 

当時は小説の作法も知らないし、誤字脱字もあるし、表現や話の持っていき方もひどかったんですが、投稿サイトだから感想もつくし、皆がアドバイスしてくれるんですね。仲いい人もできて、書き上げたらちょっと元気になったっていう。

 

 

―まさに小説に救われたのですね……

 

はい。それでだいぶ落ち着いて、とりあえず生活をちゃんとしようと、頑張って社会復帰したんです。忙しくなって、小説はたまに「野イチゴ」に書くくらいになったんですが、やっぱり書きたい。

 

それで、2011年に結婚したんですが、旦那さんに「一年だけ小説を頑張っていいですか?」って聞いたら、OKと言われたので、また投稿し始めるんですよ。文学賞とかラノベの賞とか、ネットの賞も出しまくって。そうしたら、一年が終わるくらいのときに、「野イチゴ」の大人バージョンの小説サイト「Berry’s Café」で「ソース」が大賞をいただいて、書籍(※マヒル名義)になったんです。(取材・文 コエヌマカズユキ)

 

その2に続く