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続いて訪れたのは、2006年にできたバー「猫目」。映画『酒中日記』の主な舞台になり、直木賞作家や文芸評論家など、錚々たる面々が訪れる文壇バーだ。美人ママの瀬尾佳菜子さんと木戸瑠衣子さんが出迎えてくれる。ここでも乾杯の後、インタビューの続きを行う。
書き終わった後は二度とパソコン開くかと思った
―「火花」は3か月くらいで書き上げたそうですが、どんな苦労がありましたか?
物理的なことですね。芸人の仕事が22時とか24時を回って、そっからしか書けなかったんで、単純に体力的にきつかったです。9月の半ばから書き始めて、締め切りは一応、年内っていうのは決まっていたので、12月の頭くらいを目指して。
時間もなくて体力的にもしんどかったんで、書き終わった後は二度とパソコン開くかと思いました。夏休みの宿題とかやったことなかったのに、大人になってから何で宿題せなあかんのやって。でも極限状態だったので、書き終わった後はめっちゃ気持ちよかったです。
―芸人としてデビューしたばかりの頃、力みすぎて滑ったことがあるとおっしゃっていましたが、小説ではどうでした?
最初はやっぱり力入りすぎますよね。小説書くときもそうかなーと思います。
でも、それでいいと思うんですけどね、最初はある程度失敗したとしても。力抜けるもんはそのうち書けるというか、緊張してよう分からんまま気張ってまうもんは、その年齢とか最初くらいしか書けないのでね。
―『火花』を書いた後に、世の中に出す怖さはありましたか?
書いてるときは何も考えなかったです、誰にも気づかれへんと思ってたので。けど、後で話題になってから怖くなりました。怖くてずっと読まれへんくて、とんでもないことしてもうた、みたいな。
でも友達に「面白かった」って言われたら嬉しくて、(自分で)どんどん読んでもうて、「めっちゃおもろい」みたいな(笑)。
―ものすごく話題になりましたものね。世間からの評価は気になりましたか?
なりました、なりました。普段はネットで自分の名前をエゴサーチすることはないんですけど、今回作品の中にそういう部分が出てくるから、これは見とかなあかんな、と思って。作品タイトル入れて、いろんな人の意見に触れようと思って、しばらくずっと見てましたね。