【2/3】サブカル好きの現代歌人!?伊波真人さん「短歌をエンターテインメントのひとつに」

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町の風景から見えてくるもの

 

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アニメ好きでもある伊波さん。フィギュアにくぎ付け。

 

―“電車の車窓から見える知らない町の風景を眺めて、「もしこの町で暮らすとしたら、どんな家に住んで、どこで買い物をして、どんな出来事があるんだろう」とシミュレーションするという癖”がおありだとか。特に印象に残っている街はどこですか?

 

宇都宮ですね。名前はよく聞きますけど……行ってみたら意外と観るところが少なかったんですよ。そのギャップがどの街よりも強くて。だけど、僕はそういう風景がけっこう好きなんですよ。

 

よくある日常の風景の中にも、ちょっと変わってる部分がある。そこを見つけるのが好きで。すごく何気ないんだけど、そこが逆に面白かったっていうか、「なにもない」からこそディティールを楽しむことができた。

 

ふつうの定食屋さんでも、メニューの書き方が少し変わってる……「ン」が全部「ソ」に見えるとか(笑)、そういうのをめっちゃ見てます。

 

 

―本日の取材場所である「中野」はどう思われますか?

 

中野は大好きですね。「サブカルチャーの町」とか言われてますよね。やっぱり、中野ブロードウェイがすごく面白い。オタクカルチャーから、音楽とかカフェみたいなオシャレカルチャーまで、渾然一体としてる。どっちもありみたいな。僕もそういう感じの人間なので、シンパシーを感じますね(笑)。

 

中野で毎年一回、「リアニメーション(※)」っていう、音楽とアニメーションのイベントをやってるんですが、僕も参加したことがあります。愛着のある町ですね。

※音楽やアニメ好きのための超都市型の屋外DJイベント

 

郊外にひそむ「別の世界への入り口」

 

―伊波さんのご出身はどちらですか?

 

出身は群馬の高崎ですが、幼い時に引っ越して、それからずっと埼玉に住んでます。高崎ってすごく「郊外」的な町で。「ロードサイド型」の文化モデルなんですよ。国道とかバイパスに沿って、洋服の青山とかブックオフがある。

 

いま、日本中がけっこうそういう景観になってますが、その先駆けのような町で。埼玉もそうなので、純郊外育ちっていう感じですね。

 

 

―郊外の生活に、嫌気や物足りなさを感じたことは?

 

まったくないですね。郊外が好きです。作家って、ルーツから受ける影響が少なからずあるじゃないですか。僕は郊外育ちっていうのがすごく大きくて。「日常の中の小さい部分に愛着がある」っていうのも、その影響が大きいと思いますね。

 

何もないからこそちょっとした違いを楽しむ、っていう感性が刷り込まれたのかもしれない。

 

 

―東京のカルチャーにあこがれを抱かれたり……

 

それはあったと思いますね。郊外の何もない中でディティールを楽しむ、っていうのは自分のコアな部分ですが、そういう生活のなかで、東京のものって異物なんですよ。だから、そういうものに意図的に触れて刺激を受けたのを、郊外の生活に持って帰ると、また部屋で新たな視点が生まれる。

 

 

―都心に住んでみたいとは?

 

思わないです。僕は多摩ニュータウンが大好きで。郊外育ちの血なんだと思います。落ち着くんですよね……肌に合って。 「郊外」って、僕のテーマの一つになってるんですよ。テーマはいくつかあって、「音楽」、「郊外」、あと「天体」っていう。もうちょっと大くくりなテーマだと、「日常に潜む非日常」。

 

それがまさに、「郊外でちょっとしたディティールを見つける」って視点につながる。「何気ない風景の中に、別の世界につながる入り口みたいなものを見出す」、っていうのが好きなんです。(取材・文 三七十)

 

※次回に続く

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