【2/3】サブカル好きの現代歌人!?伊波真人さん「短歌をエンターテインメントのひとつに」

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短歌からサブカルまで、多岐に渡るお話をしてくださった。

 

※前回の記事はコチラ

 

 

指先に神を宿しているように星座早見の文字盤まわす”

――『冬の星図』より

 

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現代の短冊=スマホ!?――日常のディティールを持ち帰る

 

―受賞作『冬の星図』を読んだ時の背景は、どのようなものでしたか?

 

それはたぶん、僕の人生を語ることになりますね(笑)。僕が「表現」という行為に興味を持ったのは、『機動戦艦ナデシコ』というアニメがきっかけだったんです。

 

中3のときにその劇場版を見て……作品の内容もそうなんですけど、それらの日本のアニメーションで描かれている「日常の中のディティール」に対して、すごく愛着がわいて。たとえば、風景の中に信号があったり電柱があったり、そういうもの。

 

映像制作をはじめたことで、そういうものを表現できるようになって、すごく肌に合ったんですよ。そこが僕のコアな部分なんです。『冬の星図』には、「日常のディティール」に対する愛着がすごく込められている。それを表現したいっていう思いはかなりありましたね。

 

 

―『冬の星図』には、天体のモチーフが頻出しますよね。

 

単純に天体が好きなんです。自分で天体観測に行って写真を撮ったり、そういう実体験がけっこう出てると思います。それをそのまま詠むだけじゃなくて、ちょっと空想を膨らませたりはしてるんですが、やはり実生活を通してつかんだ実感というものは大きいです。

 

 

―『冬の星図』は、どこで生まれたんでしょうか?

 

部屋で生まれました(笑)。部屋と……長野の野辺山っていう、天体観測で有名なところ等で、実際に星を観たときの経験ですね。野辺山の空気を部屋に持って帰って、あっためる、みたいな。

 

 

―それはお一人で?

 

そうですね。一人で旅して、写真撮ったり。僕は、創作のときはけっこう孤独ですね。

 

 

―いろんな場所で発見した空気感やディティールを部屋に持ち帰って、歌を詠まれるんですね。外で発見したことは、メモに取ったりしますか?

 

はい、スマホで取りますね。歌人って、短冊とか持ってるイメージじゃないですか(笑)。いまはスマホとかでやる人が多いんじゃないかと思いますけど……スマホと短冊って、なんか形似てますよね。現代の短冊ってスマホなんじゃないかと思います(笑)

 

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アイデアを書きとめるためのスマホとiPod

 

詠むときに意識していること

 

―『冬の星図』は五十首の連作ですが、ストーリーや一貫したテーマなどは意識されましたか?

 

かなり意識しましたね。「起承転結」っていうのを、連作を作るうえではすごく意識しています。というのも、僕が最初に表現を始めたのが映像で、映画の監督とか脚本をやっていたので、自然と「映画の脚本」に近い作り方をしてるかな、と。

 

僕の場合、あるシーンの断片が頭に浮かぶんですね。それを表現するためにはどう構成したら効果的か、っていうのをすごく考えています。

 

 

―では、言葉の使い方などについては、意識していることはありますか? 

 

奇をてらって変な言葉を使わない。性的な言葉や暴力的な言葉等の激しい言葉を使うと目立つ、っていう風潮があるじゃないですか。それは使う人のスタンスなので、その人の思いを表現する上で必然性があれば、使って良いとは思うんですが……

 

僕はそういうスタンスではなくて、日常の中で使うような、普遍的な親しみやすい言葉でつくったほうが人に届きやすいんじゃないか、って考えています。

 

 

―伊波さんの歌は、短歌の定型「五七五七七」を徹底的に守っていますよね。

 

意図的です。歌詞って、一字でも違うと全然変わるじゃないですか。たとえば、「一番は詞と曲のはまりがすごくいいのに、二番でちょっともつれてるな」とか。あれ、気持ち悪いので(笑)。

 

短歌を短歌たらしめてる要因って、定型だと思うんですよ。それをないがしろにするなら短歌じゃなくてもいいんじゃないかって思うので、そこはすごい大事にしてますね。


町の風景から見えてくるもの

 

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アニメ好きでもある伊波さん。フィギュアにくぎ付け。

 

―“電車の車窓から見える知らない町の風景を眺めて、「もしこの町で暮らすとしたら、どんな家に住んで、どこで買い物をして、どんな出来事があるんだろう」とシミュレーションするという癖”がおありだとか。特に印象に残っている街はどこですか?

 

宇都宮ですね。名前はよく聞きますけど……行ってみたら意外と観るところが少なかったんですよ。そのギャップがどの街よりも強くて。だけど、僕はそういう風景がけっこう好きなんですよ。

 

よくある日常の風景の中にも、ちょっと変わってる部分がある。そこを見つけるのが好きで。すごく何気ないんだけど、そこが逆に面白かったっていうか、「なにもない」からこそディティールを楽しむことができた。

 

ふつうの定食屋さんでも、メニューの書き方が少し変わってる……「ン」が全部「ソ」に見えるとか(笑)、そういうのをめっちゃ見てます。

 

 

―本日の取材場所である「中野」はどう思われますか?

 

中野は大好きですね。「サブカルチャーの町」とか言われてますよね。やっぱり、中野ブロードウェイがすごく面白い。オタクカルチャーから、音楽とかカフェみたいなオシャレカルチャーまで、渾然一体としてる。どっちもありみたいな。僕もそういう感じの人間なので、シンパシーを感じますね(笑)。

 

中野で毎年一回、「リアニメーション(※)」っていう、音楽とアニメーションのイベントをやってるんですが、僕も参加したことがあります。愛着のある町ですね。

※音楽やアニメ好きのための超都市型の屋外DJイベント

 

郊外にひそむ「別の世界への入り口」

 

―伊波さんのご出身はどちらですか?

 

出身は群馬の高崎ですが、幼い時に引っ越して、それからずっと埼玉に住んでます。高崎ってすごく「郊外」的な町で。「ロードサイド型」の文化モデルなんですよ。国道とかバイパスに沿って、洋服の青山とかブックオフがある。

 

いま、日本中がけっこうそういう景観になってますが、その先駆けのような町で。埼玉もそうなので、純郊外育ちっていう感じですね。

 

 

―郊外の生活に、嫌気や物足りなさを感じたことは?

 

まったくないですね。郊外が好きです。作家って、ルーツから受ける影響が少なからずあるじゃないですか。僕は郊外育ちっていうのがすごく大きくて。「日常の中の小さい部分に愛着がある」っていうのも、その影響が大きいと思いますね。

 

何もないからこそちょっとした違いを楽しむ、っていう感性が刷り込まれたのかもしれない。

 

 

―東京のカルチャーにあこがれを抱かれたり……

 

それはあったと思いますね。郊外の何もない中でディティールを楽しむ、っていうのは自分のコアな部分ですが、そういう生活のなかで、東京のものって異物なんですよ。だから、そういうものに意図的に触れて刺激を受けたのを、郊外の生活に持って帰ると、また部屋で新たな視点が生まれる。

 

 

―都心に住んでみたいとは?

 

思わないです。僕は多摩ニュータウンが大好きで。郊外育ちの血なんだと思います。落ち着くんですよね……肌に合って。 「郊外」って、僕のテーマの一つになってるんですよ。テーマはいくつかあって、「音楽」、「郊外」、あと「天体」っていう。もうちょっと大くくりなテーマだと、「日常に潜む非日常」。

 

それがまさに、「郊外でちょっとしたディティールを見つける」って視点につながる。「何気ない風景の中に、別の世界につながる入り口みたいなものを見出す」、っていうのが好きなんです。(取材・文 三七十)

 

※次回に続く