美しい言葉を取り入れたくてノートに書いていました
―今回の「ドール」が初めて書いた作品ですか?
この作品で、短編も含めると、だいたい十作目くらいです。
―そもそも、小説を書こうと思ったきっかけは何だったのでしょう?
本は生まれたときから身近にありました。小学生のときは童話や児童文学をよく読んでいました。小説を書きたい、と思うようになったのは、中学三年生くらいのときです。江國香織さんの、「神様のボート」を読んで、小説家になりたいと強く思いました。
―ほかに好きな作家、影響を受けた作家などいますか。
昔の作家で言うと、芥川龍之介、谷崎潤一郎、川端康成、夏目漱石はすごく好きです。今の作家だと江國香織さん、山田詠美さん、中村文則さん、吉田修一さん、桜庭一樹さんなどがすごく好きで、影響を受けました。海外だと、シェイクスピアが好きでよく読んでいました。
―具体的にどういった点で、影響を受けたのでしょう?
江國香織さん、山田詠美さんは言葉がとても美しくて、自分の中にその言葉を取り入れたいと思って、文章をノートに書いていました。小説の中で書かれている表現、言葉が本当に好きです。
自分の見ていた世界を他人と共有する喜び
―今回の文藝賞受賞によって、ご自身の作品がたくさんの人の目に触れることになると思いますが、自分の小説が多くの人に読まれることにどう感じていますか?
感想を聞くと、『気持ち悪い』とか、『嫌な気持ちになった』とか(笑)、いろいろあるんですけど。でも、全部含めて、意見を言ってもらえるのは嬉しいです。自分の見ていた世界を他の人と共有できるので。
―これからどんな作品を書いていきたいか教えてください。
「ドール」のような要素を含んだ作品も書きたいし、また全然違う作品も書いていきたいと思います。自分の中で、こういうものってあまり決めないようにしています。
―では最後に、これから本を手に取る読者にメッセージをお願いします。
この作品は、本当に一生懸命思いを込めて書きました。当時の自分を振り返ると、自分でも怖くなるくらい殺気立っていたと思います。そういう意味で、これは自分の執念の作品です。
どうしてもどうしても書くことを職業にしたかった。これで受賞できなかったら死んでしまうくらいの気持ちでした。生活環境や考え方は違えど、追い詰められ切迫した心境という部分では、主人公と重なる部分もあると思います。読む人それぞれに感じるところはあると思いますが、たくさんの方に読んでいただけたら嬉しいです。(取材・文 西川卓也)