【前編】第52回文藝賞「ドール」山下紘加さん 受賞作は“ラブドールから出発した青春小説”

 

共感できない、でも登場人物一人ひとりに思い入れがある。

 

―物語の登場人物たちは皆、個性的で、全面的には共感するのは難しい。けれど、部分的にはどのキャラクターにも共感できて、そこがこの小説の面白いところだと思いました。山下さん自身は、どの登場人物に一番共感できますか?

 

わたしも部分的には共感できますけど、全体的にはどの登場人物にもあまり共感できないです(笑)。でも、全部気に入っているキャラクターなので、一人ひとりに思い入れはあります。特に長谷川は気に入っています。

 

 

―長谷川の印象は強烈でしたね。

 

長谷川はもともと書こうと思っていなくて、途中から出てきたキャラクターなんです。長谷川が出て来たときは自分が乗ってきた瞬間でした。

 

 

―そうなのですね! 物語で重要な役割を担う長谷川が、執筆の途中で生まれたというのは驚きです。山下さんの創作スタイルは、あらすじは決めないで、書きながら決めていくスタイルですか?

 

全体の流れは決めます。最後の終わり方とかも決めて、途中で流れが変わりそうだったら、その方向に変えていきますね。

 

 

―登場人物の話に戻りますが、僕は主人公・吉沢の執着心や極端な思考にすごく共感できました。山下さんも、吉沢のように何かに強く執着することってあるんですか?

 

私自身は執着心が薄い方だと思います。でもだからこそ、小説の中ではそういうものを書きたいんです。

 

 

―そうなんですか、意外でした。ではそういう意味では、吉沢とは反対?

 

はい。でも気持ちはすごくわかります。(取材・文 西川卓也)

 

※後編に続く