【後編】出版後はテレビ出演や講演オファーが続々!?電子出版で本を出すメリットをプロに聞いてみた

※前回の記事はこちら

目次

電子出版には在庫を抱えないメリットがある。

 

ーー次に本を出版したい人にとって、電子出版で出版するメリットを教えてください。

 

まず絶版になりません。紙の場合は売れなくなると、絶版といって、もう二度と刷ることができなくなる。電子出版であれば絶版がない。なぜなら、電子書籍もオンデマンド本も配信するストアがデータを保有しているので、「在庫」という概念がなく、保管場所を持たなくて済むからなんです。

 

 

――もう少し詳しく教えてください。

 

紙の出版のデメリットは、「在庫ビジネス」だという点です。最終的には、印刷して本の形にして「在庫」を持ちます。本ができ上がったら、本を保管する場所代や問屋(取次)に送るための郵送費、売れなかったものが戻ってきてしまったら、それを廃棄するのにもかなりのお金がかかります。

 

電子書籍はデータなので、こういったデメリットが全くない。絶版がないから、一生、出版し続けられることができます。「紙で欲しい!」という方がいた場合、注文が入ったら印刷する「オンデマンド出版」で、紙で販売することが可能です。在庫がないのに、紙の本が届くってすごくないですか?

 

ちなみに、アマゾンなら在庫がある書籍と同じスピードで届きます。翌日ですよ! 先日、海外在住の方が、わざわざ日本のアマゾンで購入してくれたそうですが、購入してから3日で届いたそうです(笑)。

 

 

ーー無駄な紙を作らないという点は、環境面にも優しいですね。実際に電子出版した著者には、その先にどんな道が開かれることがあるのでしょうか。

 

紙の本の出版が決まったり、講演やテレビ・ラジオ出演の依頼が来たりすることもあります。セミナーの受講者が一気に増えた例もありますね。書籍を出す前は、受講者が月100人だったのが300人になったり。場所も5~6箇所だったのが、30箇所に増えているそうです。この間もなんかあったなぁ〜……ありすぎて忘れちゃいました(笑)。

 

 

ーーなんだか夢がありますね。そういった効果を狙って、電子出版をしたい! という方も多いと思うのですが、特別な経験のない人でも出版することは可能なのでしょうか?

 

ん〜、それはどこを基準にするかによりますね。例えば自費出版だったら、KDP(キンドルダイレクトパブリッシングの略)という個人向けサービスを利用して、誰でも出版できます。もし商業出版で発行するとなると、誰でもっていうのは難しくなります。「その本が売れるものなのか?」という審査は、必要になります。

 

 

ーーなるほど。商業出版で、企画が通る基準やポイントはどこに置いているのでしょうか。

 

電子だから、紙だから、って企画書の内容が変わるっていうのはありません。ものすごくまとめてしまうと、「読者がお金を払ってでも読みたい企画なのか」がポイントになってくるかと思います。この人の本だから読みたいとか、この内容だから読みたいとか。

 

電子と紙で違うとすれば、読者がその本にたどり着くための「キーワード」が入っているか、は大事になってきます。アマゾンで本を買おうとしたとき、本のカテゴリーの検索欄で読者がどんな単語を入れるかを考えながら、企画を立てるというのも紙との大きな違いです。

 

 

ーーそれはSEO的なもの、ということでしょうか。

 

そうですね、アマゾン内のSEO対策ですね。ネットの書店で売れ続けるためには、このテクニックが必要になってきます。どんなに良い本でも、最終的にキーワードが弱いと思ったほど売れないんです。本屋さんみたいに、実物を手にとって「あ、これいいな」っていう偶然の出会いで買ってみようというシーンが、ネットではなかなかないので。

 

 

ーーでは、電子出版で出版したいと思っている人は、まず何をするべきでしょうか。SNSで有名であるなど、実績があった方が有利ですか?

 

電子に限らず、出版したい人は誰かに見つけてもらわないといけません。SNSやYoutubeとか、手段は問いませんが。ただその後も、書籍にしたときに「ちゃんと中身のあるコンテンツか?」も大事です。SNSで有名だけど、いざ文章を書いたら中身がスカスカではちょっと(笑)。

「悩みを解決できるか」が著者デビューのヒント

 

ーー電子出版と親和性の高いジャンルや、伊藤さんが注目しているジャンルを教えてください。

 

悩みの多いジャンルがいいですね。ビジネス書は特にチャンスがたくさんあります。悩みを抱えた読者が多いジャンルなので。例えば「あがり症」とか。これは、悩みが深い割に本が少ないんです。ライバルが少ないということですね。逆に、小説は悩み解決のためのジャンルではないので難しいです。

 

 

――電子出版にチャレンジしたくなってきました! ほかにも出版のためのヒントがあれば教えてください。

 

読者が「あなたが書く必要ある?」って思わないかってところもポイントです。例えば、ヒョロヒョロで運動もしていない人が、ベンチプレスの筋トレで人生が変わります! みたいな本を書いても全然売れないと思う(笑)。

 

あと紙の本は、著者の経歴や知名度、SNSのフォロワー数、著書がある人は本の売れ行きなどが基準になることが圧倒的に多いが、電子はそういった点についてはハードル低めです。

 

 

ーーチャンスの幅が広がる気がします。ではここでちょっと骨休めに、伊藤さんの個人的な、最近あった「ごきげん」な出来事を教えてください!

 

ごきげんな出来事!? 小っちゃいことでよければなんですが。昨日、母親と一緒にべーカリーに行って、パンを買ったんです。そこの店員さんが、会計のときに「これつけときます」って、ラスクの詰め合わせと全粒粉のパンもつけてくれて。「なんで!?」って驚いたけど嬉しかったです(笑)。

 

 

ーーそれは、すごいご機嫌な話ですね!!!

 

こんなんでいいんですか!?(笑)

 

 

ーーそれでは最後に、電子書籍を使ったことがない人、出版に興味を持った読者の皆さんに、それぞれメッセージをお願いします!

 

まずは、電子書籍を使ったことがない方たちへ。ぜひ紙で欲しいもの、電子で欲しいものを読み分けしてもらいたいなと思っています。ちょっと話が逸れるんですけど、なぜ僕が、電子書籍をいいなと思って、ライフワークにしようと思ったか、なんですが。

 

僕が業界に入った当時、数百万部のベストセラーになった本が出ていました。たまたまチェーンの古本屋に行く機会があって、ふとワゴンを見ると、棚が全部その本で埋め尽くされていたんです。それを見て、何百万部っていうヒット作でも、古本屋で売れ残って最終的には廃棄されるのかと思うと、そういう本作りはなんだか嫌だなって。

 

紙の本は、何百万人に届けようとして数を刷っても、それが全部売れるわけじゃない。返本率に目を向けると、だいたい40%になることもあるんです。それって半分くらいは出版社に戻ってきて、最終的には廃棄になってしまう、ってことですよね。

 

反して、電子版は基本的にひとり一冊しか購入できない。必要な人に必要な分しか届かない仕組みなんです。だから、この本は電子版でいいんじゃないかとか、この本は紙で欲しいとか、きちんと理由をつけて本を購入し、読書してもらえたらいいな、というのが読者への想いですね!

 

 

ーー使い分けは、読者にとってもメリットになりますね。出版に興味を持った方にも、ぜひメッセージをお願いします。

 

電子出版は、出版社にとってリスクが少ないので、世の中に出した方がいいものであれば、どんどん出していきたいって思っています。なので、自分のコンテンツがいいものなんだよっていう人で出版に興味があれば、ぜひ出版企画書を書いて、持ってきてください!

 

 

ーー積極的に、企画書を持ち込んでもいいってことでしょうか。

 

そうですね。自分はいつでもウエルカムな人間です。これはちょっと宣伝になってしまうんですけど、月に一回「日本一気軽な出版朝活」をしているんです。そこにぜひ参加してもらいたいですね。そのときに面白い企画を持ってきてもらってもいいですし。個人的には書き手をもっと増やしたいので、興味があればぜひ!

※「日本一気軽な出版朝活」は、以下のごきげんビジネス出版のFBページに掲載されますので、毎月チェックしてみてください!

 

 

ーー企画書、出してみたら?(コエヌマ)

ーーぜひ! 出したいです!(岩本)

 

めちゃくちゃダメ出しするかもしれませんけど(笑)、ぜひぜひ!(伊藤)

取材後記

伊藤さんは出版業界についてだけでなく、本を作るための資源やかかるお金など、現実的な問題もお話してくれた。返本率が40%近くなることもあり、廃棄になってしまう現状は、出版に携わる人間にとっても、本好きの人間にとっても、決していいとは言えないだろう。

 

電子書籍を使うことで、利用する側も身軽になり生活が豊かになる。出版する側もリスクを恐れず、電子で面白い本をどんどん出していけば、出版業界はもっと活性化し、著者デビューする人も増えていくはずだ。電子出版がもっと広まって欲しいと願う。(取材・文 岩本彩)

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