【後編】今世は自分のやれることを 成宮アイコさん 「朗読詩集」出版までの道のりと、これから

「否定しない」という水面の波紋を広げたい

 

 

ーーこの先こんなことがしたい、こうなりたいなどはありますか。

 

本当は、会話で全て事足りるようになりたいです。今ではない人生を選ぶみたいになっちゃうんですけど、(詩作や朗読など)書く行為で代替をしなくても、考えていることや憤りやうれしいことなどを、会話でも伝えられるようになりたい。

 

でも今世はもうこの自分でやっていくしかないから、自分にできる抗い方を続けていこうって思います。そして、それを見たり聞いたりした方が、自分が思う「地続きなこと」をしてもらえたらうれしいです。

 

ライブにずっと来てくれているジュエリー作家の女の子が、賞を取ったんです。そのタイトルが「水面」で。私の詩にある「世界は、水面だ」をその子がバトンタッチして広げてくれて。そういう風に、その人自身からの水面が、波紋になって広がっていけばと思います。

 

でも熱を入れすぎないようにしたいです。物事って、自分から何センチかの範囲しか変えていけないし、それで「世界なんて変えられない」って落胆して諦めてしまうのではなくて、世界は変わらなくても淡々とやっていくのだと自分に言い聞かせて、心が折れないでいたいです。

 

 

ーーありがとうございます。最後に読者へメッセージをお願いします。

 

私が一番願うことに、「地続き感」があります。嫌いな人に対して、「あいつは人間じゃない」みたいな気持ちになることがありますよね。

 

でも、めっちゃお洒落な人だけど靴下に穴が開いてたとか、自分の洋服が引っかかったクギにその人も引っかかったとか、「地続き感」を知ると、知らない人ですら愛おしい気持ちになったりします。

 

どうしても嫌いな人がいても不幸を見たいわけじゃないので、「どうか私の知らないところで幸せに暮らしてください」って思う。

 

だって、目の前で幸せだとやっぱり嫌いは嫌いなので(笑)。好き嫌いはあるし、誰とでも仲良くはしないけど、存在の否定だけはしないでいたいです。

 

ディスり合わなくなれば楽になるし、みんな生きやすくなる。他人が不幸な世界はやっぱり自分も生きにくい。目の前に不幸な人がいることが幸せ、なんて誰も思わないはず。それぞれが地続きであることが、水面みたいに広まっていったらいいなって一番思います。

 

 

ーーありがとうございました!

 

 

取材後記

 

新刊の話から創作について、本を出してから起きた奇跡のようなエピソード、これから実現したいことなど幅広くお話を伺った。なかでも「地続き」「水面」に関するお話が印象に残った。

 

個々の立場や置かれている環境は違っても、どこかで誰かと繋がっている。その感覚を波紋が広がるように伝えていきたい。

 

一方で、自分に変えられるのは周囲の数センチのみだとも言い聞かせ、やれることを淡々と続けていく。そんな思いと決意を、成宮さんは独特の表現と口調で語ってくれた。

 

誰かの不幸を願って、攻撃したり、批判したりするのは止めよう。それは自分が楽になれるからだ、という考えに触れたとき、決して大げさではなく、「世界平和」へつながるキーワードのように感じた。

 

果たして自分には、波紋を起こすことはできているだろうか? ついそう考えたのは、成宮さんが起こした波紋が、いつの間にか押し寄せているからなのだろう。(取材・文 岩本彩、月に吠える通信編集部)

 

成宮アイコさん公式サイト

http://aico-narumiya.info/