【第2回】世界のバックパッカーに聞く!「ねえ、何の本持ってきた?」in タイ

目次

 

5人目:ジョアンナ(28歳/アメリカ・ニューヨーク)

生粋のニューヨーカー・アンナは恋人との二人旅をスタートしたばかり。

 

「ニューヨークではナニー(家庭を訪問し乳幼児を保育する仕事)として、手助けの必要な家庭の子供の世話をしていました。3日前にバンコクへと出発して、彼氏と2人で旅をしています。この後はチェンマイなど、タイを3ヶ月旅する予定です。帰国は来年の1月末なので、クリスマスも年越しも旅先で迎えます。

 

私たちは毎年2週間の休みを取って一緒に旅をしていたのですが、30歳になる前にと、今回は仕事を辞めて旅に出ました。彼とは高校時代から付き合っていて、もうすぐ11年になります」

 

恋愛が長続きする秘訣を聞きたいところだが、本について聞こう。

 

持ってきた本

「The Darkness」Ragnar Jonasson
※装丁は異なるが同じ版と思われる

「雪盲~SNOW BLIND~ アリ=ソウル」ラグナル・ヨナソン著、吉田薫 訳

※日本語版:同作品は日本未発売だが、前シリーズは日本語に翻訳されている。

 

アイスランドのベストセラー犯罪小説作家による「Hidden Iceland series(隠されたアイスランド・シリーズ)」の第1弾である本作。前作である「ダークアイスランド・シリーズ」は日本語にも翻訳されており、世界中のファンが彼の新作を待ちわびている。

 

「原作のアイスランド語から翻訳された英語版です。ニューヨークのバーンズ・アンド・ノーブル(アメリカ最大の書店チェーン)で買いました」

 

こんなに大きなサイズの本を持っている旅行者は初めてだ。

 

「私はペーパーバックよりも、ハードカバーの大きな本が好きなんです。バックパックに入れてもダメージを受けないでしょう」

 

なぜこの本を選んだのだろう。

 

「気持ちが惹かれたものを選びました。ミステリーや殺人事件の推理小説が好きなんです。18時間のフライトで全部読み終わりました。ゆっくりとストーリーが進んで、視点が切り替わったりフラッシュバックしたりと、すごく面白かったです」

 

どんなストーリーなのか?

 

「主人公は退官直前の女性刑事で、最後の事件を担当しているんです。誰も解決できていないから焦っていて。殺された被害者の周囲の人々に聞き込みを行ったりして、解決へと導きます」

 

お気に入りのシーンは?

 

「それは教えられませんね。読むべきです(笑)。最後には大きなどんでん返しがあります。彼女の過去がフラッシュバックして、仕事ばかりで今までやってこなかった全てのことを後悔するんですが、それがとてもいいんですよ。旅行も歳をとる前にするべきだなと。子供ができたら人生も複雑になりますしね」

 

巻頭には舞台であるアイスランドの地図も掲載されている。街の位置関係をイメージしながら物語に入り込める仕掛けだ。

 

アメリカでも本は沢山読むのか?

 

「私は彼氏の実家に住んでいるのですが、彼のお母さんは自分の図書室を持っているんですよ。座り心地の良いカウチで読書できるようになっているんです。お母さんは小さな本を集めているので、私の大きな本は目を引くんでしょうね。彼の家庭ではポーランド語を話すのですが、お母さんは私の本のポーランド語版を買って読んでいますよ」

 

彼女にとって最も偉大な作家とは?

 

「アガサ・クリスティは偉大だと思いますね。彼のお母さんもアガサ・クリスティの本を沢山持っていますよ」

 

大きな本が大好きだという彼女。電子書籍はどうか?

 

「電子書籍は読みません。携帯などのデバイスは、使いすぎないようにしているんです。頭が痛くなるから。だから大きな本が好きなんですよ。変かもしれないですけど(笑)」

 

既に読み終わったというこの本。この後はどうするのだろう。

 

「彼氏が今読んでいる本を読み終わったら、交換する予定です。彼も読み終わったら、ニューヨークのお母さんの書棚へ入ると思います。コレクションの一種なんですよ。お母さんは私みたいに本を手にすることが好きで、リラックスするために図書室を作ったんです。友人達にも開放されているんですよ」

 

最後に、彼女にとって本とは?

 

「自分の考えから解放してくれるものです。ストレスを忘れさせて気分転換をしてくれる、マッサージみたいなものですね!」

 

そう豊かに笑う彼女。彼女の手の中にある1冊の本から、人の輪は拡がっていく。

 

取材を終えて

 

2週間の調査結果をまとめると、15人中8人、所持率約53%という結果となった。国籍ごとに分けると以下になる。

 

 

アメリカ人:2人(持っていた人数)/2人(聞いた人数)
スペイン人:1人/1人
フランス人:1人/1人
オーストラリア人:1人/1人
日本人:1人/2人
中国人:0人/2人
ベトナム人:0人/1人
シンガポール人:0人/1人
アルゼンチン人:0人/1人
イタリア人:0人/1人
国籍不明(持っているのを見かけた):2人/2人

 

ラオスでは12人中5人、所持率約42%という結果だった。2国での調査結果を合わせると27人中13人、つまり全体の約半数のバックパッカーが紙の本を持っていた計算になる。

 

前回ラオス編の公開後、「現代でも意外と多くの人が紙の本を持っていて驚いた」という感想が寄せられた。バンコクでの取材結果からは、紙の本からしか味わえない読書体験へのやむことのない愛を、より一層強く感じることができた。引き続き次の国でもインタビューを行い、紙の本や文学の持つ更なる真価に迫っていきたい。(取材・文 荒木田慧)

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