世界のバックパッカーに聞く!「ねえ、何の本持ってきた?」in ラオス

 

2人目:オーシャン (25歳/フランス・トゥールーズ)

 

恥ずかしがり屋のオーシャンは写真NGだったため、似顔絵を描いた。

 

「去年の4月にフランスを出発して、まず南アメリカ・仏領ギアナに住む母のところへ行きました。その後は日本を3ヶ月旅したんですよ。日本の漫画が大好きで、ずっと日本へ行きたかったんです」

 

日本好きの外国人は多いが、彼女の本気度は高い。

 

「一番好きな作品? 決められませんね〜。ワンピースやナルトはもちろんですが、本当に全部好きなんです。漫画本を500冊は持ってます。アニメも観ますよ。話数が多いので旅行中もワンピースを観ています」

 

そんな彼女の目に、日本はどう映ったのだろうか?

 

「もう驚きの連続でしたね。東京は大都会で人も沢山いましたし、どこも綺麗で感激しました。漫画に出てきた場所に実際に行けたんですから、大興奮でしたよ。その後は韓国に2ヶ月、オーストラリアに1年滞在していました。私の旅は一箇所に長くいるスタイルなんです。その後ベトナム、ラオスとやって来ました。でももうタイムリミット。3週間後に、仏領ギアナへ帰るんです」

 

持ってきた本

「Troll Blood」Katherine Langrish著

※日本語版「トロール・ブラッド 呪われた船」キャサリン・ラングリッシュ著、金原瑞人訳、杉田七重訳

イギリスの人気ファンタジー作家キャサリン・ラングリッシュによる、トロールをモチーフとしたシリーズ作品の完結編。

 

ファンタジーと言うと、いわゆる「ハリー・ポッター」のような世界の話だろうか?

 

「いえ、あれはファンタスティックと呼ばれるジャンルです。ファンタジーとファンタスティックは違うんですよ。ファンタジーというのは、例えば“ロード・オブ・ザ・リング”みたいな魔法の世界の話です。ファンタスティックというのは、現実世界で魔法が出てくる話を言うんです。だからこの本はファンタジーですね」

 

なるほど。ファンタスティックというジャンルは知らなかった。

 

「実はまだ未読なんです。Wi-Fiや充電がある時はスマホで同人小説を読んでいます。だからこの本は緊急用の保険ですね。Wi-Fiも充電もない時にはこの本を読みます」

 

保険としての本。スマホやタブレットでの読書が一般化したからこその、新しい発想だ。

 

「この本は6月にオーストラリアで手に入れました。道に鳥小屋みたいな形の本棚が置いてあって、不要な本があれば自由に入れたり持って行っていいんです。本が欲しかったんですが、図書館の本は旅に持っていけないでしょう。でも買うのは嫌だったんですよ」

 

どうしてだろう?

 

「旅行中って無くしたり、荷物が多ければ置いていかなければいけないこともあるじゃないですか。私、好きで買った本はそんな風に扱えないんです。完璧な状態で保存しておきたいんですよ。オタク精神ですね!(笑)でもこの本は中古だし、特に思い入れは無いから、無くしたり手放すのも気にならないでしょう」

 

彼女にとって本という媒体が特別であるからこその考え方だ。彼女は主にスマホで同人小説を読んでいるという。その魅力はどこにあるのだろう?

 

「同人小説の魅力は、原作のキャラクターでありながら、異なる性別や性格になっているところですね。例えば今読んでいる作品は、男キャラが女キャラに変わっています。でもラブストーリーとは限らないんですよ」

 

同人小説は投稿サイトで読んでいるようだが、もし紙の本でも同じ作品があった場合、どちらで読む方が好きなのだろうか?

 

「スマホよりも紙の本で読む方がずっといいですね。実際に本を手に持ってページをめくると、作品の中に入れます。特別な感覚ですよね。スマホとキンドルでも大きな違いがあると思いますよ。スマホはSNSの通知などが来るとストーリーに入り込めないので、キンドルのほうがいいですね。特別なスクリーンだから目も傷めないし、大きな画面でスワイプしてページをめくれるし。でもやっぱり紙の本の方が私は好きです」

 

日本は本が売れない時代だが、フランスではどうだろうか?

 

「ネットなどの普及でフランスでも本を読む人は減っています。以前はどの街にも2つは書店がありましたが、現在ではほとんどが閉まっています」

 

最後に大きな問いを投げかけた。あなたにとって本とは?

 

「本は私にとって、エスケープ、逃避です。だからファンタジーが好きなんですよ。現実にはありえないことが起こるから、別世界へ逃避できる。現実世界もハッピーですけど(笑)、夢を見られますよね。現実でもありえることだとあれこれ考えてしまって、ストレスを感じるんです。ノンフィクションや歴史を学ぶことも好きですが、本で読みたいとは思わないですね」

 

控えめでおっとりとした雰囲気の彼女だが、大好きな漫画や同人小説について語るその表情は活き活きと輝いていた。

 

3人目:ルートヴィク (26歳・ドイツ・ミュンヘン)

 

左は詩集、右は日記帳。ルートヴィクは東洋の思想にも強い影響を受けている。

 

「昨年の12月から10ヶ月以上7ヶ国を旅しています。タイの次に行ったベトナムでバイクを買い、ツーリングでラオスとカンボジアへ行きました。ネパール、インドネシア、台湾にも行きましたよ。次はミャンマーです。これが初めての東南アジア旅行です。建築構造設計の大学院修士課程が終わって、仕事を始める前に海外を冒険しようと思いました。来月帰国する予定です」

 

持ってきた本

EVERYMAN’S POETRY編「Heinrich Heine」

※同じ編纂ではないが日本語版「ハイネ詩集」ハイネ著、片山敏彦訳

 

ドイツを代表する詩人、ハイネの詩集。ハイネは愛と革命の詩人と呼ばれている。本の紹介文には、ハイネの詩は噛めば噛むほど面白いとある。19世紀末ドイツの偽善と病を暴露する、彼の機知と鋭い皮肉が味わえる。

 

「この本は台湾で買いました。僕は詩が好きなんです。ドイツを経って7ヶ月くらい経っていたので、祖国が懐かしくなったんでしょうね。今読んでいるところです。詩集は小説と違って、思いついた時に開いてどこからでも読めるからいいですよね」

 

著者も詩を書くのだが、まさかハイネの詩集を持ち歩いている旅行者に出会えるとは! 感激だ。

 

「今のところ一番好きな詩はこれですね。何を言おうとしているかが良くわかりました。全ての物は美しいということです。ヨーロッパ人は“もっともっと!”と貪欲なんです。でも幸せになるのに沢山の物は必要ではないと気づきました。少しの物だけでいいんです。そういうことを僕は旅で学びましたね」

 

この本をどんな人に薦めたいか?

 

「友人には薦められないですね(笑)。詩には誰も興味を持たないと思います。僕は好きだし、時々は自分でも書くんですよ。友達に送るポストカードにも詩を書きます。ドイツでも詩は時々読んでいたけど、詩集は持っていませんでしたね」

 

ドイツには偉大な作家が沢山いるが、ドイツ人の彼から見て最も偉大な作家は誰なのだろうか?

 

「僕はゲーテだと思います。彼の作品で一番好きなのは『魔法使いの弟子』ですね。小さいころ、父が詩を教えようとして僕に与えたんです。父の思い出と重なるので、愛着があるんですよね」

 

ドイツの読書人口はどのように変わってきているだろうか?

 

「ドイツでも本を読む人は少なくなっていると感じます。スマホやネットなどの娯楽が沢山ありますからね。本は僕たちよりも少し年配の人たちのためのものになっています。つまり、若いころから読書の習慣があった人たちですね。学校でも詩や作文は学びますが、選択科目なので全員が学ぶわけではないんです」

 

詩を愛する彼は、電子書籍と紙の本どちらが好きか?

 

「紙の本の方が好きですね。匂いや手触りを感じたり、端を折ったりもできますしね」

 

彼にとって本とは何なのだろう?

 

「僕にとって本とは“答え”です。時々は歴史などに興味を持ってオンラインでも読みますが、本の方がより多くの情報を得ることができます。良い情報のソースであり、答えですね」

 

ルートヴィクは読むだけでなく書くことも好きだ。分厚い日記帳には旅の記録のほか、明晰夢(状況を自由にコントロールできる夢)を見るために夢日記も付けているのだという。