【後編】『Will』花田紀凱編集長×ころから代表・木瀬貴吉氏の公開討論 ヘイト本ブームとマルコポーロ事件の関連性

WILL NOHATE

 

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花田氏の行動は『Will』の思想と矛盾しているのか

 

木瀬氏の追及は続く。東日本大震災が発生した2011年3月11日、花田氏が「愛華訪中団」という団体に参加して中国を訪問し、現地のマスコミと接触していたことを指摘。『WiLL』の三大テーマの一つである、「中国を批判する(他の2つは小沢一郎と朝日新聞)」という思想と矛盾しないのか、と問い詰める。

 

それに対し、花田氏は「団体で行けば、向こうの外務省の高官みたいな人の話も聞けるから参加しただけ」と反論し、返す刀で「批判すべきところはする、賛成すべきところはする。これが当たり前の編集者の対応じゃないんですか?」と応戦する。

 

さらに、木瀬氏が「ヘイトクライム」と指摘した過激なタイトルについても言及。雑誌も新聞も商業であるが故に、売ることが前提であるとし、「そのときに読者がどういう関心を持っているか、どういうテーマだったら売れるかを考えて作っている。ですから、そういうタイトルが付くのは当たり前でしょ」と語気を荒げた。

 

そこを咎めているんじゃないんです、と木瀬氏は冷静に反論する。「それが売れるという風に編集者が思う、社会状況が問題なんです」と、嫌韓・憎中本ブームに改めて警鐘を鳴らした。

 

 

韓国では反日教育が当たり前に行われている

 

ここで花田氏は、週刊東洋経済(2015年1月17日号)に、北海商科大学の水野俊平教授が書いた記事を引用し、韓国の反日教育の実態について言及。

 

記事によると、韓国では中学一年生の教科書に、日本の巡査が夜に村を歩き回り、朝鮮人をとらえてトラの檻に閉じ込める、と書いてあるのだそう。それを読んだ子供たちは、日本人が許せないと思いこむ。

 

このように、反日思想が教育レベルで刷り込まれているとした上で、「1990年代初頭には、韓国で反日の本が売れた時期があった。ただ韓国人にとって、反日とは一般常識のようなもの。ゆえに反日本を出しても、熱帯で暖房器具を売ろうとするのと同じで売れない。嫌韓が目新しくなかった日本でこそ、嫌韓本は売れている」という水野教授の分析を提示した。

 

木瀬氏もその記事を読んでおり、その内容には同調したそうだが、「韓国だって反日本をいっぱい出しているから、うちも出していいんだよ、というネトウヨ的な言説では、『WiLL』がレイシズム雑誌じゃないっていう論法にはならない」とバッサリ。

 

「中国共産党や朴槿恵を批判するのは自由ですが、韓国や中国をひっくるめて、レイシスト的な言説を持つことがレイシズム。ヘイトクライムにおいてはタイトルが問題で、中身はどうだっていいんです」と続けると、花田氏はすかさず「中身はどうでもいいなんて、出版人として恥ずかしいよ。中身は読んだことも無い、タイトルがレイシズム。それこそヘイトスピーチだよ」とやり返す。

 

論点は再び「タイトルが重要」「中身を読め」に戻り、堂々巡りの様相を見せる。

 

 

ヘイト本が売れる社会状況は異常

 

ここで木瀬氏は、『WiLL』が2006年以来、一本も訴訟を抱えていないことを指摘。その理由について、「あなたがレイシズムに走ったからです」と断言する。「『人を喰う中国人に喰われるな』というタイトルにすれば、訴訟は起こされない。要するに、原告の当事者資格が誰にもないからです。なぜそこに逃げるんですか?」という追求に、花田氏は「ナンセンスだね」と取り合わない。

 

全くかみ合わない議論が続く中、木瀬氏は花田氏の根底にある思いに踏み込んでいく。それは、情熱を傾けてWiLLを作っているその先に、どのような社会を望んでいるのか、というもの。花田氏は憮然としながらも、「今の日本が全ていいとは言いません、もっと住みよくて人が生きやすい日本にしたいと思ってやっているんじゃないですかね」と回答する。木瀬氏は追求の手を緩めない。

 

木瀬「もうちょっと具体的にお聞かせいただけますか? 人っていうのは?」

 

花田「それは日本国民でしょうね」

 

木瀬「日本国籍をお持ちの方?」

 

花田「基本的にはそうでしょうね」

 

木瀬「それ以外の人は?」

 

花田「もちろんいいですよ」

 

もう一歩踏み込んでほしいんですけど、という木瀬氏の追求を遮り、花田氏は「嫌韓憎中やヘイト本がなぜ売れていると思いますか?」と逆質問を浴びせる。すると木瀬氏は、ころからから出版した『九月、東京の路上で(加藤直樹)』こそが、なぜヘイト本が売れるのか検証した本であると紹介する。

 

 

木瀬氏によると現在の日本は、1923年の8月31日(関東大震災時、混乱のなかで流れたデマによって、人々が自警団を結成。軍や警察も関与する形で、朝鮮人を無差別に虐殺する事件が関東各地で発生)と同じ状態。だからこそヘイト本が売れていると分析すると同時に、この社会状況が異常だと訴えているのが本書だという。

 

マルコポーロ事件とヘイト本の共通点

 

しかし、花田氏はすかさず反論。ヘイト本が売れている理由について、「これまで日本人が韓国に対して無知であったから」と説明する。「従軍慰安婦問題も政治賠償も竹島問題もそう。韓国の人は、どうしてあんなに無法な言いがかりができるんだろう。そう思って、関心が高まっているからじゃないですか」と花田氏。

 

そう言う見解もあると思う、とした上で、木瀬氏は「今、日本の出版業界で起こってる状況は、マルコポーロ事件から全て繋がっていると言うのが私の見立てです」と、花田氏の苦い記憶に触れた。

 

マルコポーロ事件とは?

1995年、花田氏が編集長を務めていた月刊誌「マルコポーロ」が、「ナチ『ガス室』はなかった」という記事を発表。これにユダヤ人権団体「サイモン・ウィーゼンタール・センター」が抗議し、企業に広告出稿を取りやめるよう働きかけた。一連の騒動の中、発刊元の文藝春秋社は「マルコポーロ」を廃刊し、謝罪した。

 

木瀬氏「それは何かというと、歴史修正です。ガス室は無かった、南京事件は無かった、天安門事件は無かった……日本人は韓国のことを知らないなんて言いましたけど、花田さんの世代ならそんなわけはない。

 

日韓は反共の砦(※反共産主義)としてここまでやってきた歴史があります。それをあたかも無かったかのように言いくるめて、韓国はずっと半日だったと歴史修正した上で、レイシズムに走っている……」

 

花田「(遮って)新しい資料や証言が出てきたら、歴史は変わるのが当たり前です。修正しつつ真実に近づいているんじゃないですか? 歴史修正だ、ヘイト本だっていうレッテル貼りは辞めてください!」

 

ここで、イベントの終了時間がやって来る。最後に花田さんに提言したい、と木瀬氏は切り出す。

 

木瀬「歴史修正がネトウヨの燃料になっているのは事実なんですよ。マルコポーロ事件から20年。ヘイトクライムを生んできたのがこの20年だったとすれば、呪詛から抜け出す言葉を持つのは、花田さん、あなたです」

 

花田「……意味が分かりません」

 

多分伝わったと思います、という木瀬氏の言葉を無視し、花田氏は「とにかく、今日は本当に時間の無駄でした、というのが私の結論です。タイトルだけ調べて、読んでもいない人と話ができない」と吐き捨てた。

 

 

結局、双方が歩み寄ることはできないままに終わった今回の討論イベント。日本を良くしたい、という根底の思いは同じであっても、その手法や思想の違いによって対立が起こるのは、さながら社会の縮図のようだった。この先出版業界はヘイト本とどう関わっていくのか? 社会にどのような影響をもたらすのか? 今後も見守っていきたい。(取材・文 コエヌマカズユキ)