朔くん、白さんが福岡へ!「月に吠えらんねえ」清家雪子先生の書き下ろし作品が蒲原有明展で展示

 

改稿に込められた表現者の業

 

 

また、清家先生は企画展に際して、自身と蒲原の共通点についてもコメントを寄せている。それは「改稿」について。蒲原有明は、「詩の改稿」で有名である。

 

山部さんによると、修正や校正を通り越して、タイトルも作品も新しく作り変えるレベル。第4詩集の『有明集』以降は、実質的に新作を発表せず、これまでの改訂版ばかりだった。詩人の間では、「改悪」だと不評だったが、蒲原は改稿を止めようとしなかった。

 

その改稿問題に関連して、清家先生は「僭越ながら私の漫画の場合」と前置きしたうえで、

 

・連載原稿を単行本に収録する際、自分が納得出来ない部分を書き直すことが多い

・修正前の方が、デッサンに狂いがあっても、表情に勢いがあることも

・歪んだ絵を修正したい欲求が止められない

 

こういった趣旨のことを語っている。蒲原はなぜ改作をし続けたのか、これまで不思議に思っていた渡邉さんも、清家先生の言葉を受けて腑に落ちたという。

 

「改稿した結果、作品がよくなっている、悪くなっているじゃなくて、表現者の業みたいなものがあって。(改稿前の原稿を)読んだら手を入れずにいられない、そういうことかなと私は思ったんですね」(渡邉さん)

 

確かに、過去の自分が作ったものをよりよくしたいという欲求は、創作に携わる人の性分といえるのかもしれない。蒲原有明と清家雪子先生。二人の表現者の意思が、時代を超えて繋がった瞬間を目の当たりにできた気がした。

 

蒲原有明の詩や、普段あまり知ることのできないその人物像を、野田宇太郎との関係性を交えて知ることのできた今回の企画。都会の喧騒から離れ、ゆったりとした風のなかで、どっぷり近代文学に浸かる濃密な時間を過ごさせていただいた。なにより渡邉さん・山部さんがナイスキャラで、当初の取材予定時間をあっという間に大幅にオーバー。つい長時間滞在してしまった。

 

そして、企画のほかに驚いたのは、その貴重な資料の数。ぜひ一度野田宇太郎文学資料館のHPの「資料検索」のページで所蔵資料をチェックしていただきたい。余談だが私も訪問前にこちらをチェックし、自分の趣味全開で、見たい資料(『吾輩は猫である』の明治村版等)をピックアップして行った。実際に間近で生の資料を見る感動や、そこから得られる情報量は計り知れない。

 

野田宇太郎の信念があり、そしてそのスピリットを脈々と文学館の方々が受け継いできたからこそ、この空間があると思うと、それらすべてが多くの人に伝わってほしい、と心から思う。ぜひ、近代文学に携わる方をはじめ、一人でも多くの方に体感していただきたい。ご訪問の際には、野田宇太郎文学資料館HPの、「ご利用にあたって」のページのご一読もお忘れなく。(取材・文 ささ山も子)

 

野田宇太郎文学資料館

住所:福岡県小郡市大板井136-1 小郡市立図書館内

開館時間:午前10時~午後6時(金曜日は午後8時まで)

休館日:毎月第1・第3月曜日、毎月最終水曜日、年末年始

入場料:無料

電話番号:0942-72-7477

公式HP:http://www.library-ogori.jp/noda/

 

朔太郎の墓を訪れる野田宇太郎の写真
野田宇太郎による九州文学散歩の地図

 

山部さんが作成した、近代詩の歴史や詩派の影響関係が一目でわかる表