【前編】『月に吠える』刊行100周年!仕掛けと愛が満載の展示がすごかった@前橋文学館

 

率直に聞いてみた、「月に吠える」の魅力とは?

 

展示を堪能した後、取材陣はある種の無茶ぶりともいえる質問を、学芸員さんにぶつけてみた。それは、「改めて『月に吠える』の魅力は何ですか?」というもの。

 

すると、津島さんと猪俣さんはじっくりと考え込み、「魅力は語りつくせませんが」と前置きしたうえで、

 

津島さん「朔太郎は内面の奥底を見つめ、それを様々なイメージを喚起させる詩の言葉にしています。『月に吠える』では、竹や菊などの植物、犬や猫や貝などの動物ほか、いろいろなモチーフを使って詩として表現しています。その鮮烈なイメージとリズムは独特で、100年経っても色あせていない。個を深く追求することで普遍性を獲得しているのが朔太郎で、『月に吠える』の詩なのだと思います」

 

猪俣さん「近代詩を変えた、と言われていますけど、いま現代も詩をつくる人に影響を与え続けているという意味では、なかなか他にない詩集と言えます。本当に今でも新しいと感じます」

 

と、簡潔かつ分かりやすくお話しくださった。展示だけでなく、学芸員さんとのコミュニケーションからも、朔太郎の新たな魅力を知ることができる。改めて文学館の楽しさを感じた。

 

朔太郎と朔くんの夢のコラボが実現!

 

また、企画展と同時に、『月に吠えらんねえ』展も開催された。こちらは出力原画、コミックスの表紙とオマージュ元の詩集のデザインの比較、参考文献の一部など様々な資料が展示されている。また、朔くん・白さんといったキャラクターのパネルや、「居酒屋BOXY」。エレベーターの扉には、『月に吠える』を抱いた朔くんのイラストが。これらはすべて清家雪子先生の書き下ろしだという。

 

『月に吠えらんねえ』とのコラボレーションにあたって、館長や学芸員の方々は、「朔太郎記念館の、朔太郎が使っていた書斎に朔くんが、白秋が滞在した離れ座敷に白さんがいたら良いのでは?」「オリジナル・グッズはどんなものが喜ばれるか?」など、趣向を凝らしたそう。

 

 

 

「群馬ゆかりの詩人や地元の名物が登場する描き下ろし漫画も描いてくださった。本編の原稿の執筆との調整の中で、清家先生には本当に色々と協力してくださってありがたかったです」と猪俣さん。

 

学芸員の方はもちろん、『月に吠えらんねえ』を読まれているとのこと。印象に残っている朔くんの描かれ方、詩の使われ方について伺うと、猪俣さんは戦争詩について挙げる。

 

猪俣さん「戦争詩は、文学の歴史の中で黒歴史といえば黒歴史の部分。当時、一部の詩人たちは、どうしても戦争を高揚するような詩を書かなければなりませんでした。その書いてしまった詩人について、朔くんに複雑な思いを正直に語らせているところが印象的です」

 

続けて、「個々のキャラクターの発言から、すごく勉強されていることが伝わってきます。文学を知っている人だけでなく、知らなくても何かを感じられるようになっている。こんなに素晴らしいものを読まされてしまうと圧倒されますよね」と『月に吠えらんねえ』に敬意を示していた。

 

 

 

残念ながら10月9日で幕を閉じた「月に吠える記念展」(※「月に吠えらんねえ展」は前橋文学館4Fで引き続き開催)。展示はもちろん、文学館併設のカフェでの限定メニューや、オリジナルグッズの販売なども大好評だったという。

 

『月に吠えらんねえ』のファンと思われる若い女性の来場者も多かったとのこと。逆に『月に吠える』100年展を見に来た方が、『月に吠えらんねえ』を知り、興味を持ったこともあるそう。両作品の合同展示によって、相乗効果が発揮されていたようだ。

 

記念展は終了したが、前橋文学館2Fで、朔太郎の常設展示は行われている。津島さんは、「展示をご覧いただくのはもちろん、広瀬川沿いを散策したり、前橋文学館の周辺にも楽しんでいただける場所がたくさんあります」と前橋をPR。「100年前に朔太郎が暮らしていた前橋を堪能していただければと思います」と笑顔で呼びかけた。(取材・文 ささ山もも子)

後編へ続く

 

前橋文学館

住所:群馬県前橋市千代田町3-12-10

休館日:水曜日・年末年始(祝日の場合はその翌日)

観覧時間:午前9時-午後5時

TEL:027-235-8011

HP:http://www.maebashibungakukan.jp/