【後編】『月に吠えらんねえ』清家雪子先生も登場!石川近代文学館「うたえ!□街の住人たち」

 

月吠えの裏側が明かされる? お宝トークイベント

 

サイン会は午前・午後ともに大盛り上がりで終了。その後は会場を移動し、トークイベントへ。開場時間前にも関わらず大勢のファンが待機列をつくる。

 

前方に向かって左側に清家先生、右側にゲストであり、「月に吠えらんねえ」の装丁を手掛けるデザイナー・芥先生がご着席。芥先生の右隣に、Oさんが立ち、進行を務める形式だ。

 

トークイベントも終始なごやか。

 

序盤では、『月に吠えらんねえ』のアイデアが生まれた時期など『月に吠えらんねえ』連載に至るまでの背景のお話がメイン。

 

特に印象的だったのは清家先生は「ストーリーが「映像」として、いわば1本の映画として頭のなかにある」というお話。清家先生にとって、漫画を描くのは、その映像を絵に変換しているという感覚を持っているとのこと。そ、その映画、見たいです……!!

 

また、学生時代は歴史学を専攻されており、書簡等の読み下しはご自身で行っていると語る。読み下しにあたり、「白秋の書簡の中に、どうしても『ろれどれ』としか読めない部分があったんです。でも、ある時『ろんどん(ロンドン)』だーー!! って!」と読み下しがぴったりはまった時の喜びを語り、会場のファンからも笑い声が。

 

『月に吠えらんねえ』本編で暗い展開が続くと、健康状態を心配されることもあるという。しかし、清家先生は「ストーリー作りはとても楽しくやっています、元気です!」と笑顔。また、「バラエティを見ながら描いたりもします」という意外な執筆中の秘話も明かされた。

 

カバーデザインにも人知れずこだわりが

 

後半では芥陽子先生を中心に、カバーデザインの裏話がたっぷり。『月に吠えらんねえ』のカバーは、毎回清家先生と芥先生で密にやり取りしながら、色合いや文字の配置の細かい調整に時間をかけているという。

 

4巻表紙は与謝野晶子『みだれ髪』の初版本をオマージュし、カバーには同作の詩が浮かび上がっている。アッコさんの頭に「恋」が入るよう綿密に計算したとのこと。

 

 

そして、話題はタイトルのフォントに。本来「みだれ髪」は4文字。そこに「月に吠えらんねえ」(8文字)を当てはめてフォントを再現するのは、半ば無茶だったと振り返る芥先生。特に苦労したのは「吠」の字のフォント探しだったという。

 

「『みだれ髪』の印刷所を調べてみたら、「東京築地活版」という活版印刷所がつくっていて。そこの出版物から「口」の字と「犬」の字を探して、組み合わせて「吠」の字をつくりましたね。」と芥先生。

 

表紙の一文字にこんな物語があったとは……!! 表紙は手に取ってカバーをめくらないと知ることのできない部分。そこにもインスピレーション元となった作品への敬意と愛情、そして職人魂が宿っていることが伝わってきた。

 

こうして『月に吠えらんねえ』尽くしの1時間はあっという間に過ぎ、大盛況のうちにトークイベントは終了した。最後はサイン入りの『月に吠えらんねえ』4巻を手に、ファン全員で記念撮影。月吠えファンにとって忘れられない1日となった。

 

余談だが、印象的だったのは記念撮影終了後、空模様は突然急変。昼間の晴れ間と一転、金沢は大雨に見舞われたこと。まるでイベントの終了を名残惜しんで、朔くんが雨を降らせているよう。

 

 

室生犀星ら遠い時代の作家たちが紡いだ名作。そこから生まれた話題作『月に吠えらんねえ』。「うたえ!□街の住人たち」は、そんな過去と現在の文化の結晶を一気に味わえる空間でした。そして遠くない未来、また月吠えファンが集結できる日がくることを心待ちにしています!(取材・文 ささ山もも子)

 

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