【後編】31音にかける青春。文化版の甲子園「第12回全国高校生短歌大会」レポート

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いよいよ最終日、1つ1つの試合にどよめきが

 

壇上で歌を披露する選手たち

 

最終日、決勝リーグ1試合目の前に、敗者復活戦の進出校と個人戦の決勝戦進出者が発表された。結果、敗者復活戦を勝ち抜き、決勝リーグに駒を進めたのは、秋田県立横手高校。

 

また、個人戦決勝には、仙台高校の原澤祐き乃さん、小牛田農林高校の本間健太さん、横手高校の相澤鈴さん、横浜翠嵐高校の松長諒さん・野沢みのりさん、福岡女学院高校の中村朗子さんが「声」の題で、八戸高校の藤田悦子さん、三沢高校の木村茉季さん、横手高校の平山友里夏さん、下妻台地高校の宮川由子さん、高崎工業高校の中里颯哉さん、横浜翠嵐高校の松永諒さんが「立」の題で進出を決めた。選手たちは満面の笑みを浮かべ、喜びを表現していた。

 

決勝リーグからは、特別審査員の小島ゆかりさんが審査に加わり、質問も、他4名の審査員からのものと、小島さんからの計2つが行われることになる。そのため、選手は自分の詠んだ歌や題、相手の歌などをより詳しく解説しなければいけない。

 

初戦は、福岡女学院高校と下館第一高校の試合。試合は先鋒、中堅、大将ともに下館第一高校の歌に軍配が上がる。前年度優勝校の敗退に、会場からはどよめきが起きていた。

 

続く2試合目は、青森県の高校同士の試合。歌を詠んだときの心情など、オーソドックスな質問が続く中、「炎天下/挑発のごと口歪め/パピコを一人占めする家路」と詠んだ八戸高校の川崎詩織さんに、小島さんから「挑発のごと口歪め、という動作を今この場でやってほしい」という質問が投げかけられた。

 

イレギュラーなこの質問に会場内はざわつきをみせたが、川崎さんは「動作よりも心情面を重視してほしい」と冷静に対応し、結果、試合は八戸高校の勝利となった。

 

その後の第3試合、第4試合は仙台高校、久慈東高校が勝利。準決勝進出を決めた選手は別室に移動し、これまでと同じように題詠を行った。題は「道」。優勝という栄光の道を進むことができるのは、はたしてどの高校か。

 

個人戦決勝戦開始。大会最高得点の歌が生まれる

 

団体戦準決勝の前に、個人戦決勝戦が行われた。審査方法は、団体戦決勝リーグと同様に、質問に2回答え、その後、各審査員5点満点の計25点満点で作品を評価するというもの。

 

題の「声」と「立」のうち、最初に「声」の審査が行われた。序盤で小牛田農林高校の本間健汰さんが「僕たちの/一生分の/どれだけの声を形にできるだろうか」という歌を詠んだ。審査員は「この歌の思いは、全選手に共通しており、大会を通じた真剣な気持ちがよく表れている」と評価。結果、22点の高得点をたたき出した。

 

最後に、福岡女学院高校の中村郎子さんが「長雨に/濡れた葵の花のような/ふるえる君の声に触れたい」という歌を披露。普通、短歌のなかにおける「君」は異性を指し、相聞歌(=恋愛の歌)としてとらえられることが多い。

 

そのため、「君」の解釈を求める質問が投げかけられたが、それに対して中村さんは、「この歌の君は友人で、彼女が涙ぐむ姿を詠んだものです」と答えた。「君」が友人を指すという意外性に審査員は驚き、悩んだ末に全員がこの歌に5点をつけた。

 

その後、「立」の審査も行われたが、同じ得点の歌は現れず、中村さんが大会最高得点で個人戦最優秀賞を受賞した。

 

この夏、中村さんは、学校の先生から毎日題をもらい、その題に沿って2首歌を詠むなど、題詠の練習を続けてきたという。中村さんは、まだ高校1年生。「来年は団体戦でももっと上を目指したい」と意気込みを口にした。

 

質疑応答の後、歌を評価する審査員

 

個人戦最優秀賞を受賞した中村さん