ハマる“ことば”の見つけ方 歌人×作詞家クロストークイベント

目次

 

自分に合った表現方法とは?

 

―メロディー・韻律以外の「短歌と歌詞の違い」って、なんだと思いますか?

 

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hotaru:内容が全然違う。文学だと思うんですよ、短歌は。こっちは、流行歌なんですよね。だから表現の仕方が全く違ってくる。僕の詞の場合は、ある程度の輪郭を提示して、「こういう意味なんだよ」って誰が見ても分かるようにしたり、ユニークな言葉を使っておもしろくしたりします。

 

伊波:つまり、受け手が誰か、ってことかなと。短歌って自分のためにつくるものだと思うんですよ。ただ音楽っていうのは、基本的にはリスナーのためのものだから、リスナーのために書く。そこが違い。

 

hotaru:たしかに。今だと、「バズらせたいな」っていうのもあるんですよ。ツイッターとかで、リスナーさんに、「この曲のこの部分がいい」「この言い方マジうける!」っていう感じで切り取らせたい(笑)。だから、なるべく短いフレーズで、切り取られやすいように考えてますね。印象に残るようなフレーズを絶対どこかに入れるとか、長くなっちゃうところを、フレーズで分けるように書き換えるとか。

 

 

―短歌・歌詞をはじめ、数多ある「ことばを使う表現」の中で、自分に合った媒体をみつけるにはどうしたら?

 

伊波:やってみるしかない。

 

hotaru:仕事としてやるなら、「やってみて評価されたもの」ですね。

 

伊波:「日常生活の中で何が気になるか」っていうのも大事だと思いますね。表現を選ぶのは、結婚相手を選ぶようなもの。たとえば、日常の中のちょっとしたこと、ディティールが気になっちゃう人は、そういうものを表現できる短歌が向いてるかな。

 

hotaru:僕が作詞家として仕事をしていてよく言われるのは、「入り込むタイプだよね」。キャラクターソングとか、キャラになりきって書くものだと特にそうですね。結婚相手を選ぶには、他人の意見も大事じゃないですか。人に求められることの中で、一番力が発揮できるものを選ぶのが、効率がいいかなと。

 

伊波:あとは、いろいろやってみた中で、最後まで、「やろうと思わなくてもついやってしまうもの」かな。

 

hotaru:それは間違いないですね。好きこそものの上手なれ。

結婚相手を交換!?

 

「やってみるしかない!」ということで、なんと今回、伊波さんは歌詞、hotaruさんは短歌と、お互いの表現方法に挑戦していただきました。使用したモチーフは、「青春文芸アニメ『つきほえっ!』」(※架空のアニメです)。

 

青春文芸アニメ「つきほえっ!」ストーリー

月吠(つきほえ)高校に入学した元引きこもりの主人公・作太郎(さくたろう)は、幼なじみのふみ子に強引に誘われ、弱小文芸部に入部。自信家の2年生・あき、クールな3年生・式(しき)という個性豊かな仲間と共に、”高校生文芸甲子園”に向けて奮闘することに。目指せ、高校生文芸マスター!

 

【テーマ曲(作曲:aor)】※メロディのみ

https://m.soundcloud.com/lemon-t-1/lalalavocal-version

 

まずは、作詞家・hotaruさんが短歌を披露。

 

手紙とは違う言葉を探すほど広がっていく行間の幅 

「踊れません」そう言うきみの朗読は言葉が跳ねてピンポンのよう 

消してきた言葉がすでに何万字 眠れぬ夜の眩しい星よ

 

「初挑戦とは思えないほどお上手!」と大絶賛の伊波さん。会話体・1字あけ・詠嘆といった短歌のテクニックが駆使されており、「おさまりのよさを重視する、作詞家らしい視点」が生きているのではないか、と指摘。

 

内容についても、「短歌は景色に感情を投影できるものなので、ネガティブな状況ならネガティブな景色を詠むことが多い。けれど、三首目では『眠れぬ夜』なのに『眩しい星』としていたりと、全体的に、ネガティブとポジティブのコントラストが際立っているのが特徴的ですね」とコメント。

 

しかしhotaruさんは、短歌を作ってみて、「文学にならない」と感じられたとか。「伊波さんのように、答えを出す2,3歩手前で立ち止まる感じ、ができない。やっぱり僕は、わかりやすく答えを出してしまう感性になってる。主戦場の違いかな、と思いますね」。

 

つづいて、歌人・伊波さんが歌詞を披露(以下のリンクより、先ほどのテーマ曲へ歌詞を入れた楽曲を聴けます)。

 

「放課後のノベリスト」

(青春文芸アニメ「つきほえっ!」テーマ曲)

https://soundcloud.com/lemon-t-1/d2c2a1fvmfpm

 

hotaruさんはまず、「全体を通して、よくある“J‐POP的な表現”になっていない。だけど、メッセージがちゃんとリスナーに伝わる、歌詞らしいわかりやすさもある」と、比喩表現の妙に触れられました。

 

また構成についても、「Aメロで明るい部分、Bメロで暗い・深い部分、サビで明るく前向きな歌詞を書く、というアニソン的セオリーにのっとっていますね。このままアニソンの歌詞として十分通用します」とコメント。

 

加えて、よりよくするためには、「『歌詞』という“言葉の無法地帯”を生かして『一見意味の分からないことば』を取り入れてみる」、「内容的に近い部分をぎゅっと一行に詰める」、「サビの頭に何か頭に残るフレーズを入れる」、などのテクニックがあることをお話しされていました。

 

創作をされている方は、いつもと違う表現方法に挑戦してみてはいかがでしょうか。自分の得意分野を再確認したり、応用できるテクニックを見つけたり、より自分に合った表現方法に出会ったり……あたらしい発見をする中で、いつか“結婚相手”に巡り合えるかもしれません。(当日司会・取材・文 三七十)

 

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