【後編】「谷崎潤一郎メモリアル2015」でんぱ組.inc夢眠ねむ、これからはツイッターで「春琴抄なう」

 

奥泉「誰にとっても100%面白い小説は世の中にないんです。そもそも小説って、単なるインクの染みに過ぎない。自分で面白い世界を作って、それを面白がるのが小説を読むということ。だから、面白い小説と出会えたら、面白い世界を自分が作ったということで、読者の手柄なんですよ」

 

夢眠「じゃあ、どんよりした頭で小説を読んでたら、ずっとどんより?」

 

奥泉「先入観を持っているとそうなりますよね。後は、本を買ったことや、読んだことは人に言わないとダメ。すると誰かが『読んでみようかな』となって、関係が広がっていくので」

 

夢眠「これまでは何となく、自分と小説だけで完結させるべき気がしてました。でもこれからは、気軽にツイッターで、『春琴抄なう』『購入なう』『読了なう』みたいにつぶやきます!」

 

そして奥泉は、夢眠に勧めたい谷崎のタイトルとして、『猫と庄造と二人のおんな』『細雪』『吉野葛』『陰翳礼讃』を挙げる。その魅力として、文章の美しさやグルーヴ感を挙げ、「小説はストーリーが大事だけど、本質ではない。小説ならではの、文章の良さや美しさや楽しさが良いなって思って、自分で面白さを作ることができるようになれば、文豪の攻略は目前です」と熱弁。

 

すると 夢眠は「読みたくなってきました! あれ、こんなところにー」と、『谷崎潤一郎全集(中央公論新社)』を取り出す。ちゃっかり本の宣伝を行った夢眠に、会場は爆笑に包まれたのだった。

 

そしてトーク終了後、夢眠は『春琴抄』の最後の一節を、奥泉のフルートに合わせて朗読。句読点が極端に少なく、朗読者泣かせのこの作品を、情緒たっぷりに、見事に読み上げる。夢眠の声で語られる、(登場人物である)佐助と春琴の何とも数奇で切ない生涯に、会場に集った谷崎ファンたちも改めて胸を震わせたことだろう。

 

奥泉も「上手いですね。僕も結構朗読をやっていますが、難しくてあまり上手くいかない」と脱帽した様子。それを受けて、夢眠は安どの表情で「はぁぁぁぁぁ、緊張しました……でも、貴重な経験をさせていただいてありがとうございました!」とコメントし、会場の大きな拍手を浴びていた(取材・文 コエヌマカズユキ)。

 

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