住んでいるとは言いたくない【吉祥寺】

わたしが日ごろ生活の拠点にしている吉祥寺は、東京の西の方ではお洒落な街として名をはせている。

 

Googleで「吉祥寺」を検索して最初にヒットするのは、駅の北側にある「ハモニカ横丁」での食べ歩きについてだ。どの街でもそうなのかもしれないが、やたらグルメ情報が多い。数時間で食べきれる量なんて決まっているのに、どうしてそんなにグルメ情報ばかり知りたがるのだろう。

 

また、サイトは違っても掲載されている店はほとんど同じなのだから、見れば見るほど悲しい気持ちになってくる。もうこれ以上、窓が大きく光がたっぷり入るカフェや、一度は食べたいカレーの話は聞きたくないというのが正直な気持ちである。

 

吉祥寺駅南口、公園に行くにはこちら側に出る

 

いったんグルメをよそにおいて吉祥寺のことを考えると、井の頭公園のことが思い浮かぶ。つい先日100周年を迎えたばかりのこの公園は確かにきれいだ。まだ人の少ない朝方に、昨日返却し忘れたDVDを持って歩いているときなんかは、自分の健康な生活ぶりにちょっぴり涙が出そうになる。浮いているだけのように見えるカモたちも愛らしい。

 

 

ただこの公園は思いのほか狭い(あとトイレも汚い)という難点がある。先日上野に出かけて驚いたのだが、上野公園の道幅はここの3倍はありそうだった。休日の井の頭公園は追い越すのも、すれ違うのも渋谷なみに忙しい。ジャリ道も多く、小さい子供が走っているのを見ると少しドキドキする。転んで泣いたりしたら大変だ。

 

休日はここに露店も出るためもっと狭くなる

 

吉祥寺の外からやってきて公園を観光しようと思う人は、井の頭線各駅停車の「井の頭公園前駅」で降りたほうがいいだろう。ここなら休日でも人ごみに揉まれることはないし(人ごみは喧嘩の元だ)、風に乗って付近を漂っている家系ラーメンの匂いに出鼻をくじかれることもない。

 

こんな風に書いていると井の頭公園と言うのは、あまり良いところがないような気もする。けれど、この公園に「愛してると言ってくれ」のような素敵なイメージを持ってこられても、せっかくのデートにケチがついたりしかねないので忠告しておかなければならないとも思う。

 

特に今はかいぼり(水抜き)をやっていてボートには乗れず、池の周りには柵が張り巡らされている。可愛いカモさんたちも見えない。

 

豊悦が絵を描いてたのはどこだろう

 

私がこの公園で気に入っているのは夜の路上ライブのお兄さんと、いせや本店の方に歩いていくとある「旅荘 和歌水」という連れ込み宿だ。

 

お兄さんの方は平日はほぼ毎日立っていて、大学からの帰り道でもう何十、何百と聞いてきたが全く上達していない。草野マサムネを意識しているのだろうな~、という風貌なのだが、それも相まって悲しい笑いが誘われる。めちゃくちゃに熱い愛を歌っている日もあって、そういう夜はこちらのハートがずるむけになりそうだ。一聞の価値はあると思う。

 

連れ込み宿の「旅荘 和歌水」はつまりラブホテルなのだが、その佇まいがとてもいい。昭和初期頃からあるらしくかなり古いが、その分とても安く、私の知り合いも何人か利用したことがあるらしい。

 

最近読んだ安西水丸さんの『東京美女散歩』でも不倫で利用したようなことが書いてあった。吉祥寺にはラブホテルが3件あるのだが、そのうち和歌水を含む2件に霊の噂があり、そのうち1件には強盗が押し入ったりしているので、そういう面ではこの街もかなり楽しい。

 

和歌水

 

しれっと外に看板がある

 

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